ターイゼイ市場(ミャンマー)

突然だがバンコクにあるメークロン市場というのをご存知だろうか?鉄道のすぐ両脇に市場が開かれ(知らない人は画像検索すると分かるが本当にすぐ両脇!列車との間はなんと1mもない!)、線路沿いの店では折りたたむことのできるテント屋根が延ばされ線路を覆うようにしている。列車が入って来るや否や屋根は折りたたまれ、通過すると屋根は元に戻され何事もなかったようにいつもの日常の賑わいが戻ってくる。とてもシュールな光景なのだが、そんな線路上市場がマンダレーにも存在している! バンコクの方は有名なので観光客でごった返しているくらいだが、マンダレーの方はガイドブックにもあまり載っていないので穴場感があり外国人はほとんど皆無だ。なおメークロンは線路の両脇に店が並んでいるタイプなのに対し、マンダレーの方は個人の自由持ち込み勝手にお店スタイルなので文字通り線路上でも普通に売買が行われるという正に本当の意味で線路上市場なのである。バンコク版だと列車通過時に線路内には流石に商品は置いたりしないようだが、マンダレーでは線路内に置かれた野菜類は列車通過時でもそのまま置かれているので野菜の上を列車が通過していく、もちろん店主は通過後に元のところに戻り何喰わぬ感じでまた商売を始めるのである。

この市場の名称はThaye Zay Station Bazaar というが、一説ではzayがミャンマー語で市場を表す単語らしい。そうすると訳が“Thaye市場駅の市場”という訳の分からない名称になってしまうが、思うに元々Thaye Zayという市場のそばに駅が作られて駅名がThaye Zay Stationとなった。しかし後年インフラの発達で駅名そのもの方が市場より認知度が上がってしまい駅のそばの市場をThaye Zay Station Bazaarと呼ぶようになったのではなかろうか。なおこの市場のメインは屋根のある建物の店舗型の部分であるが、それが拡大して線路の方にこのような自由市場が出来上がったようである。

実際に中に入って市場をのぞくと、ミャンマーの田舎の市場とそう雰囲気が変わらない。線路という鉄の棒が地面の横たわっているのを除けば、相変わらずいたるところ売買の交渉する村人の大きな声が響き渡っている。線路が埋もれていて、ただの市場と見分け付かないぐらいになっているとこともある。ここが線路だってことを彼らは忘れているのでは?とさえ思えてくる。

しかしよく見ると線路は存在が無視されているのではない。中には線路を椅子代わりにして座っている人もいる。つまり線路としての存在というか、細長い椅子として存在にすぎないのだが、彼らにとっては線路上ということに日本人が感じる危険な所という認識は全くないのである。

そしてもちろんこういう喧しい市場でよく出来るなと感心するのだが平気で昼寝をする人も普通にいる。一応列車が通る前にはかなり大きなサイレンが鳴るので、寝ている間に轢かれるといった心配はないだろう。

線路内に野菜を置いて両脇で交渉する姿を見ると、線路というのは彼らにとって店の仕切りに過ぎない。

今年はネズミ年、市場を歩くとゲテモノも見かけるが、さすがネズミ系の焼き物には現地の御馳走だとしても食指が動く気配は全くない。

列車が通過する時間になると汽笛が響き渡る。メークロンだと屋根を折りたたむが、こちらはパラソルを移動させるだけだ。線路上で売買している人は自分の店舗という意識のためか、商品をどかすと元の場所がなくなるリスクのためかわからないが列車通過時でも結構野菜などの商品を置きっぱなしにしている。列車が野菜を一見踏みつぶすように入線してくる光景がシュールだ。なおこの自由市場エリアは複線になっていて、このThaye Zay Stationが終点で折り返しポイントである。したがって入線してくる列車は駅に15分かそこら停まって反対の線路に折り返して発車する。つまり二回チャンスがあるのだ。

世の中には我々の常識という概念が異なる世界が色々存在している。この市場の村人が日本の線路を見たならばきっと 日本の線路って市場やっちゃいけないの?! それ以前に入っちゃいけないの?! ときっと驚くことになるだろう。我々の中の概念習慣というのは我々の国の中におけることに過ぎない。世界には概念においても多様な世界が存在している。

ホムペの方もよろしく   https://asahikotaka.com/

1+
Asahiko Takahashi
  • Asahiko Takahashi
  • Photographer & Doctor 日経ナショナルジオグラフィック写真賞2019ピープル部門 最優秀賞受賞。少数民族やその祭りなどに興味を撮影を行っている。主なフィールドはシーク教、遊牧民、北ベトナム、雲南省、貴州省、チベットエリアなど。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA